小鳥のきりりA2    「きりりの決断」

さて、こうして毎日きりちゃんに話しかけながら
私はインドへ行く準備をしていました。

この頃、私は大病の後の体調がまだ不安定でした。

何の知識もないインド、海外経験は新婚旅行くらい

しかも現地では一人旅という設定の旅の参加に、いろんな心配も抱えていました。

それでも、ひとつひとつクリアしながら、出発の二日前を迎えました。

週末の夜、夕食も終わって、私は荷物のパッキングをしていました。

すると、もう寝ている時間のきりちゃんが、

急に、外に出してくれとパタパタと騒ぎ始めました。

いつも夜8時ごろには、自分からカゴにはカバーをかけて欲しいと寝る準備の催促して、

あとは静かに寝ているきりちゃんなのに、珍しいなと思いながら、

「はいはい、わかったよ、どうしたの?」と、外に出してあげました。

指に乗せて、ひとしきり私とおしゃべりしたあと、

きりちゃんはいつものように、お気に入りの椅子の足ばの所にちょこんと止まりました。

「あと少ししたら寝るんだよ。」ときりちゃんの話しかけ、

私はそのままパッキングを続けました。

テーブルを挟んで向こう側では、夫が立って、何か自分の用事をしていました。

私はテーブルに背をむける格好で、座り込んでいました。

そのほんの数分あと、突然、2つの大きな声が響きました。

「僕、もう行くね」という声が頭の後ろから、

それに重なるように、「わぁ!」という夫の悲鳴が聞こえました。

その瞬間、私は「あぁ、今、きりちゃんが行ったんだな、夫がきりちゃんを踏んだんだな」とわかりました。

とても落ち着いた、静かな「あぁ、そうなのか」という気持ちでした。

夫は、パニックのようになって泣いていました。

「なんてことしてしまったんや!俺がきりちゃんを殺してしまった。

みーちゃんがあんなに大事に可愛がっていたのに・・・!」

夫が泣くことはほとんどないし、あんな風に取り乱しているのを見たのは初めてで、

とても気の毒でした。

きりちゃん、ごめん。ミーちゃん、ごめんと泣きながら、何度も繰り返し泣いていました。

きりちゃんは何の傷もなく、ただ目を閉じているだけのように見えました。

両手に包んで、夫に見せました。

「落ち着いて。ほら見て。綺麗な顔してるよ。

きりちゃんは殺されたなんて思っていないよ。これがきりちゃんの寿命だったんだよ。

それよりも、今までありがとうって言ってあげて。」

夫は泣き腫らした目で、「きりちゃん、今までほんまにありがとうな。」と言いました。

「僕、もう行くね。」というきりちゃんの声が聞こえた私には、

あの子が自分で旅立つ時を決めたとしか思えませんでした。

でも、そのことは夫には言わずにいました。

普通に考えると突拍子もない話に聞こえるし、明日、落ち着いてから話そうと思いました。

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