小鳥のきりりB3 「もうダメかも・・・」

この頃、私は隣町に習い事に行っていました。

小鳥には3時間ごとにご飯をあげていたので、行って帰ってくると間に合わない。

でも、ずっと続けて行っていたレッスンを休みたくなくて、教室の近くの友達に小鳥のご飯をお願いすると、快く引き受けてくれました。

小鳥の入ったケースとご飯セットを助手席に乗せ、できるだけ揺れないように慎重に運転し、うちから30分の友人宅を目指しました。

そして、後ろ髪を引かれながらも、友人に小鳥を預け、3時間ほどのレッスンを終了。

急いで引き取りに行きましたが、小鳥はとても元気な様子でホッとしました。

うちに戻ってからも、きりちゃんはいつもと変わらないようすで、遊んだりご飯を食べたり。

ところが、夜になって・・・

突然、きりりがピィ!と大きな声で鳴き、食べたご飯を吐き戻したのです。

そのあとも、何度も鳴きながら、口からご飯をまき散らし、ついにコロンと横に倒れてしまいました。

上に上がった片足が微かに震えています。

もう大きな声は出ず、私の方を見ながら、弱々しい声でピィィと鳴いています。

びっくりした私は、ペットショップに電話をしました。

今の状況と、外に連れ出したことを話すと、小鳥の先生は「あー、それはもう助からないと思いますよ。」と一言。

「何かできること、ないでしょうか?」

「無理ですね、死にますよ」

がっくりして、電話を切りました。

「きりちゃん、ごめん」

かわいそうで、かわいそうで、ケースのそばに座り、心の中で「お願い、助かって」と繰り返しました。

小鳥は倒れたまま、時々薄く目を開けては私の方を見ては、また目を閉じていました。

「ダメなのかな・・・」

ところが20分ほどすると、小鳥は何事もなかったように起き上がりました。そして、普通の声で「ピュルリ」と鳴きました。

「元気になったの!もう、大丈夫なの?!」

そのあとしばらくして、きりちゃんはまたご飯を食べ、いつものように眠りました。

ペットショップに電話をして、小鳥が回復したことを伝え、お騒がせしたことのお詫びをしたら、ほーっと力が抜けました。

あとで思うと、まだ赤ちゃんなのに車に揺られたり、普段は大人だけの静かなうちと違う、まだ小さな子供さんのいる賑やかなお家で過ごすのは、刺激が強すぎたのでしょう。

可哀想なことをしてしまいました。

でもそれ以降、きりちゃんは風邪一つひかず、元気に育ってくれました。